■■■ 忘年会〜P氏の災難 ■■■ 
               Keiko様



「おはようございます、ヤン提督」
 ヤンが珍しく朝から雑務に追われていると、執務室に「イゼルローン1のお祭り男」との異名を持つ、オリビエ・ポプランがノックもなしに入室してきた。
「珍しいな、アッテンボローならここにはいないぞ」
「知っていますよ」
 最近、ポプランはアッテンボローの周りをうろうろしていると、ラオが溜息を吐いて愚痴をこぼしていた。そのことを知っていた「魔術師」の異名を持つ彼は、縁なしの眼鏡を外すと、書類からポプランへと視線を移した。
「何か用か?」
「冷たいな〜」
 ポプランは無邪気な笑顔を浮かべた。
「忘年会、しませんか?」
「・・・・いいよ」
 あっさりとOKを出したヤンだったが、注文を付けた。
「スピーチをしなくて良いならね。それから、上層部全員にOK貰ったらいいよ」
 ポプランは喜び勇んで、執務室から出ていった。

「忘年会?」
 大会議室のドアを相変わらずノックもせずに入室してくると、アッテンボローとセレス、キャゼルヌ、ムライは書類の整理に追われていてピリピリとしていた雰囲気の中、ポプランは無邪気にはしゃいでいた。
「見てわからない?それどころじゃないんだけど」
 セレスはいつもコンタクトレンズを装着しているが、連日の徹夜業務のために目が疲れきっていたため、眼鏡をかけていた。彼女は、赤いフレームの眼鏡を外すと、ポプランを睨み付けた。
「いつ頃、終わりそうですか?」
「明日の朝までには終わらせないといけないんだよ。お前も手伝うか?」
 珍しく、アッテンボローもヤンとおそろいの眼鏡をかけ、小型端末のキーボードを叩きながら、ポプランを睨み付けた。
「じゃあ、明後日の夜八時頃、忘年会しましょうよ」
「体力と気力が復活していたらな」
 決裁書類のチェックをしていたキャゼルヌは、溜息交じりで言った。
「羽目を外しすぎなければいいぞ」
 キャゼルヌの真向かいにいたムライが珍しく優しい口調でOKした。
「絶対ですよ」
 ポプランがスキップして退室すると、再び黙々と仕事を始めた。
「よう、ポプラン」
 廊下を歩いていたポプランに突然、抱きついてきた男がいた。
「アッテンボロー提督以外の男に抱きつかれても嬉しくないぞ。リンツ大佐」
 薔薇の騎士と呼ばれる陸戦部隊の一員であるリンツは、ブルームハルトと一緒に食堂へ向かう途中だった。
「アッテンボロー提督は売約済みだろ、あきらめろ」
「うるさい」
 ふてくされたポプランはわずか数秒ほどで先ほどと同じ無邪気な笑顔を浮かべた。
「今週の土曜日、忘年会をしようと思っているんだ」
「忘年会?」
 ブルームハルトが声を上げると、ポプランが耳元で囁いた。
「セレスのドレス姿が見れるかもよ〜」
「み、見たい」
 ブルームハルトはイゼルローン要塞駐留艦隊、唯一の女性提督に実は恋心を抱いていた。
「決定、明後日の20時だからな」
 と言うと、ポプランは再びスキップを始めた。

「あれ、不良中年」
 官舎へ戻る途中、カリンと彼女の父親が仲良く歩いている姿を目撃したポプランは、カリンの肩に軽く手を置いた。
「誰が不良中年だ」
「じゃあ、不良壮年」
「うるさい、青二才」
 などと、やり取りをしていると、カリンがワザとらしく咳をした。
「・・・何の用ですか?」
「あっ、えっと、土曜日の夜・・・・」
「忘年会があるんでしょ?ユリアンから聞きました」
「わかっているなら良いんだ。私服で出席してね」
 ポプランがカリンの頬に軽くキスをした。
「おい、ポプラン!!」
「じゃあ、待っているからな」

 その後、ポプランは、イゼルローン駐留艦隊上層部全員に忘年会の話題を持ちかけた。そして、忘年会当日。
 セレスがアッテンボローとヤンのエスコートで、会場となっていたレストランに行くと、コーネフが近づいてきた。
「あれ?ポプランは?」
 黒のカクテルドレスに身を包んでいた彼女は、会場内を見渡した。
「あいつか」
 コーネフは大笑いすると、近くにいたリンツも近づいてきた。
「惜しい奴を・・・」
「えっ?」
「問題は多かったが、良い奴だったのに」
 二人は涙を浮かべて、肩を震わせていた。
「ポプランがどうしたんだ?」
 珍しく心配した表情を浮かべたアッテンボローを見て、二人は大笑いをした。
「ちょっと、聞いてくださいよ。あいつ」

 その頃、ポプランは病院に入院していた。
 昨日から腹痛に悩まされ、訓練中に意識を失い、病院へ運ばれ、緊急入院を言い渡されたのである。
「くそう、右手にはアッテンボロー提督、左手にはセレスを侍らせてはしゃげたのに」
 白いブランケットを頭までかぶりながら涙を流していた。

-―――ポプランの病名は・・・・
 ストレスから来る腸炎と腸捻転と診断され、しばらくの間、入院し、下痢と腹痛に悩まされる事となったのはいうまでもない。


                             〜〜おしまい〜〜                                               良いお年をVVV 2003年
 

■管理人:有━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 けいこさま、この度はほんとうにありがとうございましたV
私のわがままで、明るい宴会みたいなお話(だったような・・)を
お願い致しましたところ早速心優しいけいこさんはサンタさんがいらっしゃる
前に私にプレゼントしてくださいました〜〜。
 忘年会ものだからってぎりぎりに出すのは何事!?って感じですが、
私も辛かった〜(今も辛い・・・)
なんにせよみなさま一夜限りの昇華を堪能してくださったと思われます。
 個人的にさりげなくいちゃつきあっているあの方達の描写がお気に入りだったり
して〜〜VVV
 しかし〜〜ここまでポプランが年末に叩かれたことがないのではないでしょうか?
たいていのらりくらりと逃げる彼ですが、上記の病名はご愁傷様。
養生せぇよポプラン・・。















































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